一番びっくりしたのは新貝さんだ。俺を追おうとして、その後おっちゃんのことを思い出し躊躇する。 

困った顔でおっちゃんに一礼だけして、俺の後を追ってきた。
 

412: 48 02/03/10 01:21
新貝さんはずっと後ろを着いてきたけれど、会話はその後一つも無かった。困り果てた気配が後ろから伝わってくる。でも、そんなのお構いなしだ。 

・・・自分だって死体を見つけたこと自慢してたくせに。 今まで誰にも叩かれた事が無いのも手伝って悔しくって仕方が無い。 

それも、おっちゃんに叩かれるなんて。 

413: 48 02/03/10 01:23
自慢して見せたけど、俺は本当は不安でしょうがなかったんだぞ。 

穴が見えてきたとき、走り出すのをこらえられなかった自分の気持ちが所在無げに俺の周りをうろうろしている。邪魔で邪魔でしょうがない。 

おっちゃんの言いたいことはわかるけど、世の中には言い方ってもんがある。だいたい、俺の気持ちはどうなる。 

414: 48 02/03/10 01:24
おっちゃんに届くはずが、行き場をなくして俺の回りを漂っている俺の気持ち。そう、そうだそれに俺の立場ってもんはどうなる。オンナ連れだぞ。 

今日の俺は新貝さんのヒーローだ。最後にヒロインの前で説教くらうヒーローなんかいるか!それもわからないなんて、あいつはやっぱりダメな奴だ。 

きどって挨拶してみたり、俺の気持ちに気づいてるそぶりをして見せたり。カッコだけだ。一番肝心なことがわかってない。

お父さんとおんなじくらいの年なのに、あんなカッコして、あんな穴にすんで、仕事もしてなくって・・・ 

415: 48 02/03/10 01:38
俺は気づきたくないことに偶然気づき始めていた。 俺の心の奥に、宿ぬしにも気づかれないままひっそりと隠れていた、俺の一部分。 

いやだいやだみたくないみたくない、いくら拒んでも、強い力で這い上がってくる。まるで、こと時のために力をためてたみたいだ。 

それは否応なしに、俺の視界に入ってくる。俺の顔だ。まだ、あどけない顔をした小学生。俺の顔が何かしゃべろうとする。 あわてて耳をふさいだけれど、少しだけ聞こえちゃったんだ。 


俺は、おっちゃんを、見下して、


子供だけど、俺のほうが、マシだって、


お父さんモ、今度ショウシンするし、


おっちゃんは、オカネ、ガ、無クッテ、程度が、低、クテ、




ダカラ、俺ラト、アソんでも、楽しくテ、チョウドヨクテ・・・・・ 

416: 48 02/03/10 01:47
最低だった。なんだよ、これ。こんなの知らないよ。腹が立って腹が立って仕方が無い。 

おっちゃんの顔が浮かんでくる。 なんだって、笑顔なんだよ・・・ 

なぜかおとうさんの顔が浮かんでくる。これも笑顔。めったに見れないくらいの。 

今度はおかあさん、今日のご飯は約束してたよね。カラアゲツクッテクレテルカナ・・・ 

おじいちゃん、普段は無口だけど、酔っ払うとボクの自慢をハジメルンダ・・・ 

やさしいおばあちゃん、

オバアチャンハ、


サイキンゲンキガナインダ、


ナンデナノ、



オカアサンニキイテモオシエテクレナカッタンダヨ・・・ 

417: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/10 02:16
なんかもうガックシ

418: 48 02/03/10 02:48
気づいたら、泣いてた。漏れは取り返しのつかない罪を犯したんだ。 

心の中の黒い塊が浮き上がってきたことと、死体探しなんかしちゃいけないってこと。まったく別のことなのに。そのときの漏れはまだ、そんな筋道だった考えなんかする力は無い。
 
漏れはひどい人間だ。 もう、みんなに合わせる顔なんて無い。だめだ、もう漏れはひとりぽっちだ。ただたださみしくなってくる。 

ほかにひとはいないの? とっても高い上のほうから誰かが見ている。 

自分は、さむざむしい薄青い星にはだかんぼうでひとりぽっち。そんな想いが漏れのこころをつつんでいく。 

419: 48 02/03/10 02:50
でも、その時うしろからくしゃみが聞こえたんだ。
 
・・・うしろには新貝さんがいる。さっきから黙ってついてきている。そうだった。 

新貝さん。大好きな新貝さん。新貝さんのことを好きなんだって、はじめて気づいたような気分だ。 

くしゃみでも何でもいい。新貝さんが後ろに居るってことがわかるだけで。 一人じゃないってわかるだけで。
 
俺は徐々に落ち着きを取り戻し始めた。 

420: 48 02/03/10 02:51
そうなると俺の自尊心がまた騒ぎ始める。 

やばい・・・俺、泣いてる・・・。子供の世界では、男の涙は死を意味する。武器になるときもあるってことを知るのは、まだだいぶ後だった。 

ましてや、ホームレスに説教くらって泣き出すヒーローは居ない。この苦境をどうにかしないと。ヒーローらしい勇ましいやり方で。

俺は、しゃくりあげる音をごまかすため、猛然と手にした懐中電灯を振り回し始めた。ぶん、ぶん、て音がして、ちょっとはごまかせそうだ。 

いいぞ。 

421: 48 02/03/10 02:52
ぶん、ぶん、ぶん、 そのうちにしゃっくりもとまって、そんなことする必要が無くなる。いい感じだ。かんぺきだ。 

俺が振り回すのをやめると、あたりにはもとの静寂が戻ってくる。俺は、今日何度目かにどきっとすることになる。

うしろからすすり泣く声が聞こえてきたからだ。 

山影


422: 48 02/03/10 02:53
聞き覚えのある泣き声。今度ははっきりわかる。誰かは明らかだ。何故かも明らかだった。懐中電灯が悪いわけが無い。 

どきどきしながら黙って歩いていると、しばらくして新貝さんが泣きやんだ。結局もとの沈黙が戻ってきただけだった。 

423: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/10 04:14
続きキボンヌ。

425: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/10 21:57
なかなかいい展開になってきましたな。 

426: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/10 22:32
立派な糞スレになりました




427: 48 02/03/10 23:02
黙ったままバスに乗り、黙ったまま歩き続け、新貝さんの家と俺の家との分かれ道に着いた。 

いまさらさよならなんていえるわけが無い。というか、もっと他に言うべきことはたくさんある。でも、当時の俺にそんなことが言えるはずもなく、頭の中には男の尊厳をいかにして守るかってことが渦巻いていてた。

毛も生えてないくせに。 

428: 48 02/03/10 23:06
混乱して、混乱して、混乱するうちに又腹が立ってきて・・・俺はそのまま振り返ることすらせずに家へ歩いた。 

そう、ふてくされるってやつだ。甘えて見せてるとも言う。でも、やっぱり毛も生えてない新貝さんが、俺を甘やかすだけの母性を見せるはずも無く・・・うしろからは何の言葉も投げかけられない。
 
少し歩いたけど、このまま分かれていいものかどんどん気になる。耐えられなくなって恐る恐る振り向くと、新貝さんの背中が見えた。 

429: 48 02/03/10 23:08
家に帰って、寝た。 

ふてねって奴だ。 

430: 48 02/03/10 23:09
数日後、地元の消防団の樹海捜査があった。 

次から次に死体が見つかって、大人達は今年は豊作だなんて言って笑ってた。 良くない冗談なのは俺にも分かった。おっちゃんに殴られたこともあって、それを聞いたときはやけに不快だった。
 
ましてや、そんなにたくさんあるのにひとつも見つけられなかったなんて、俺がゼンゼン駄目みたいじゃんか。 

そして・・・ 聞くところによると、遊歩道のすぐ近くや、せせらぎの辺りでもたくさん見つかったそうだ。 

431: 48 02/03/10 23:10
何のことは無い、そこらじゅうにあったんだ。

俺らが気づいてないだけだった。 俺らが気づかないだけで、俺らの周りに死はいつもあったんだ。
 
去年から、一年間、俺らが通いなれた道、俺らの笑い声、悪ふざけ、そしてあの日の俺と新貝さんの周りに、死は溢れてたんだ。 

432: 48 02/03/10 23:16
俺は九分九厘手にしたものを失った。
 
しばらくのあいだ、ベッド以外のところで過ごせないほどの喪失感にさいなまれた。眼にするもの全てが平坦に見えて、意味を成さなくなる。 

もちろん、当時の俺は何でこんなにつらいのかなんてわかっちゃいなかった。毛が生える生えないなんて事すら気にならないほど子供だった。 まだまだ狩の練習中ってところだった。 

飢えに苦しんだり、狩をしくじって命からがらにげまわり、これが命がけの行為なんだってわかってくるのは、ずっとさきの話だ。
 
ただ、いくら練習中でもしばらく元気が無くなるくらいのダメージはあったってことだ。 

433: 48 02/03/10 23:17
俺はそれからおっちゃんのところには行かなくなった。 新貝さんとも話さなくなった。 

434: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/10 23:40
きちんと>>1とも絡ませてほしいなぁ・・・

435: 48 02/03/11 02:45
それからかなりの時間が経った。 新貝さんと近くにいる時はかなり気まずかった。

俺はなるだけ新貝さんに近づかないようにした。何だか情けないばっかりだ。 

436: 48 02/03/11 02:46
何度か、謝ろうかなんて考えたけど、そんなのかっこ悪すぎる! 

・・・ちょっと待てよ、色々あったけど、俺だって考えてみれば結構活躍してるかも。そうだよな。だって、無事に帰ってこれたんだって俺の力だぞ。

・・・としろう? 「としろう」は、まぁ、あれは犬だからな。まぁ、その、・・・そんなもんだ。 

うす甘い強がりに浸っていると、だんだん自尊心が回復してくる。でも、ひょっとして、やっぱり謝ったほうがいいのかも・・・ 

437: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/11 21:02
もう、オワリカ

438: 48 02/03/11 23:02
そんなある昼休み、机に座っていると横に誰かが立った。何だかやな予感。
 
バレないようにこっそり上履きを見ると、「新貝」ってかいてある。気づかない振りをしてたけど、空気に耐えられなくなってついに目を合わせてしまった。 

うぅ、やっぱり気まずい。 新貝さんは、言いたいことを切り出せないように、口をもごもごさせていた。 

そしてしばらく沈黙が続いた後に、おっちゃんに謝りに行こう、って一言だけ言った。 

そんなことわかってんだよ! 俺から切り出そうって思ってたんだ! 思ってたんだぞ、思ってたんだけど・・・ 

教室


439: 48 02/03/11 23:03
結局は自分から切り出せなかった事が恥ずかしくて、俺はしばらく口を尖らせていた。それが正しいことはわかっていた。 

でも、俺は新貝さんのヒーローだし・・・ 考えあぐねたあげく、「わかったよぅ」と、だけわざとぶっきらぼうに答えた。精一杯低い声で。こんなんでも少しは俺の威厳が保てたんだろうか。
 
机を離れる前に、新貝さんが気まずそうに付け加える。 

もう、気にしなくていいからね、あたし、ゆるしてあげるからさぁ・・・ 

それだけ言うと、はずかしそうに走っていってしまった。 

・・・だめだ・・・俺って・・・。 

440: 48 02/03/11 23:04
これ以上の醜態は許されない。でも、二人っきりじゃ、正直自信が無い。細谷を連れて行くことにした。

でも、助けを求めてるわけじゃない。あくまでも、俺の相棒としてだ。付け加えるなら、俺が赤だったら、おまえはよくても青だぞ。俺のそんな心の中なんか知る由もない細谷は、いつもの軽いノリであっさり了承した。 

約束は今度の日曜日。あの日から二ヶ月がたってた。 

441: 48 02/03/12 00:51
細谷はどの学年にも一人はいるタイプの小学生だった。決して中心人物ではない、でも、ひょうきんで誰とでも打ち解ける。 

ギャグも、小学生としてはいい線いってた。 奴のう○こち○ちんは絶品だった。当時流行ってたギャグだからみんながやってたけど、あの味は誰にも出せなかった。下級生は奴のう○こち○ちんをあこがれのまなざしで見つめたものだ。 

そして、俺の親友で、おっちゃんのことを知る4人の中の一人だった。でもこうして考えると、やっぱこいつ黄色かも。 

442: 48 02/03/12 00:53
細谷は新貝さんとも打ち解けて話してくれて、いいムードを作ってくれた。連れて来てよかったと思う。いいぞ!その調子だ!よくやったぞ、イエロー・・・ 

おっちゃんの穴に着いた。どうやって謝ろう。その前に、どんな顔をして入っていけばいいんだ。なんとかしろ、イエロー! 

そんなこと言えるはずもなく、困り果てたまま穴をのぞくと、おっちゃんが穴の中で呆然と立っていた。 

なんだか様子がおかしい。

おっちゃんの前には、異様に大きな何かがあった。
 
見たことも無い何かが。 

444: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/12 00:59
やっと謎の物体が出てくるんだな!

445: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/12 01:02
何だこのスレ・・・

446: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/12 01:04
>>443>>444 
>>48
ってすかすの好きやけん、もう一発くらいすかされそう。 
って、いつまでつづくのか・・・

448: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/12 02:24
新貝は細谷を好きになったね。
 
「俺」かわいそう・・・

451: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/12 10:37
もう1の話は終わったの? 場所は違うけど友人がおんなじようなもの見たっていってた。

453: 個人的には 02/03/12 23:09
もっと1の話を聞きたい。戻ってきて欲しい。 反感買うかもしれないけど、48は邪魔。

466: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/14 12:41
え?>>1 はネタでしょ?わかっててそれを楽しむスレじゃ? 
>>48は本当だろうが作り話だろうが続きが楽しみなので頼む。

468: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/14 19:32
俺が続き見てぇーんだよっ!! だから他のやつは黙ってろ!!

475: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/15 00:03
だ・か・ら、48がいると1は帰ってこれないの? 

1を待ってる人は1が居ないことだけ確認して読まなきゃいいだけなんじゃ? 48が居なかったらdatおちしてて、このスレの事なんか忘れちゃってたんじゃないだろうか。 いや、素朴な疑問なんだけど。 

1や、1のねたをひっぱってる奴が居る上で48がやってたらウザイトは思うんだけど・・・

476: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/15 00:46
>>475 
>>48がいると>>1は帰ってこれません、べつに>>1が帰ってくる必要はありませんが。 自分で終了宣言してたし。 

現段階ではスレッド後半が>>48の話で埋まってますので>>48を無視して進行させるのもどうかと。

 青臭い青春の話を延々続けた挙句>>442でやっとスレッドに関係ある事を話すのかと思ったらその後音沙汰なし。誰だってイライラします。

495: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/03/15 16:58
>>476 
納得。 だいたいにおいてボクもおんなじ考えです。 

ただ、どうもボクは48のあの話の長さもネタの一つだったと思ってるんですよ。ひょっとして一年くらいやるかも、ってのもネタとして捉えてた。>>48が書かなくなってまだ3日位だし、もうちょい待ってみるつもりです。 

まぁ、>>48はおいといて別に話を続けてもいいじゃんってのは気持ち変わんないけど。 

480: 476 02/03/15 03:14
このスレは>>1がいなくなった後でもネタスレとして再利用できると思ってたんすよ。実際、それは宝石だ!とか>>1は殺された!とかいろいろ言われてたし。 

そしたら>>48が昔話を始めたでしょ? 正直わくわくしたッス、どんなネタ振るんだろうか?とかいろいろ考えながら見てたら、ほかの奴らもちょこっとだけど話を膨らませ始めてきて、おー盛り上がるかな?と思ったんだけどね。 

>>48は他人の話を聞かずに昔話をひたすら続けて・・・ただでさえのろのろ進行していたスレッドに止めを刺して消えていったと思ってます。 

あと>>1>>48の話はまったく別々ではなく、大きなひとつのネタだと思ってるんですよ、あくまで個人的にはね。

481: ポッコ 02/03/15 13:17
>>480 
なるほど。

【その7へ】