ガキの頃、ダム湖に沈んだ自殺者の引き上げ作業をやっていたのを、橋の上から見てた。 

底に沈んでいる自殺者を引き上げるのは、クレーンの先に碇のようなものを付け、それを沈めて底をさらって引っ掛けるという作業なのだが、数十分さらっていたら、クレーンを動かしていたおじさんが「多分引っかかったなぁ」と言いながらクレーンを引き上げた。 

するとクレーンの鎖がどんどん巻き戻ってくる水面のあたりに黒いものが見えだした。よく見るとそれは長い髪の毛。仏さんは女性だったらしく、髪の毛は軽いので先に上がってきて、水面におびただしい髪の毛が上がってきて四方八方にさーーーっと広がった。 

まだ小学校入りたてだったガキのオレは「これは絶対見ちゃいけないもんだ」と思い、速攻で遺体を見ずに家へと走り帰った。 

次の日、一部始終を見てた同級生に聞くと、遺体は水を吸ってぶよぶよになってたそうな。それから朝まで何も食えなかったと青い顔をして話してくれたなあ。