あの日は本当に怖い思いをしました。
私はその日、一人で美濃戸口から八ヶ岳の赤岳を目指していました。その日の天気はうす曇で、翌日も天気はすっきりしなさそうでした。しかし私はせっかく来たのだからと登ることに決め、樹林帯を歩き始めました。
行者小屋を経由し、地蔵尾根を登り、地蔵尾根を登りきった時には12時を回っていました。その日は赤岳展望荘に泊まることにしました。泊まっていたのは私と他2グループだったと思います。 中高年の夫婦が1組と、おじさん2人が1組。 翌日の日の出を期待し、就寝しました。
私はその日、一人で美濃戸口から八ヶ岳の赤岳を目指していました。その日の天気はうす曇で、翌日も天気はすっきりしなさそうでした。しかし私はせっかく来たのだからと登ることに決め、樹林帯を歩き始めました。
行者小屋を経由し、地蔵尾根を登り、地蔵尾根を登りきった時には12時を回っていました。その日は赤岳展望荘に泊まることにしました。泊まっていたのは私と他2グループだったと思います。 中高年の夫婦が1組と、おじさん2人が1組。 翌日の日の出を期待し、就寝しました。
明け方、私はごそごそと起き出し、日の出を見ることにしました。その日は少しもやっていましが、窓から見た朝日はそれはそれはすばらしいものでした。
私は荷物を用意せずに一旦建物の外に出ました。あたりの気温は多分5度くらいだったろうと思います。寒かったのでジャンパーを着ました。そして何気なく、今まで上ってきた地蔵尾根側を見たのです。すると、霧の向こうに人影が見えたような気がしました。
最初は気のせいかなと思いました。しばらくきょろきょろと見ていると、霧の向こうに確かに自分よりもずっと大きな怪しい人影があり、しかもその人影は動くのです。
しかしその影がある位置は立てるはずがないのです。私より数歩先は崖になっていて、人間が立てるわけがありません。私は恐ろしくなって建物内に戻り、誰とも話さず震えていました。結局その日は、赤岳頂上に登らず帰りました。
いま考えてみても、あれは得体の知れない体験でした。あの人影はもしかしたら滑落した人の亡霊かもしれません。
あれ以来八ヶ岳には一度も行っていません。